2014年4月9日水曜日

"C'étaient tellement beaux, les cerisiers"

久しぶりに会った知人は、大きなマスクを着けていた。
「すみません、ご無沙汰ばかりの上にこんな顔で」
「いえ、そんな。花粉症ですか」
「風邪を引きまして。ここ数日の急な冷え込みで、すっかり」
「寒かったですねえ、ほんとに」
「こういう気温の乱高下にカラダがついていきません。歳とりましたよ」

先週末から今週始めのほんの3、4日だったが、花冷えというにはあまりにも冷酷な寒さに見舞われた。その前の数日は日中の気温が24度に達するなどすっかり春だったので、我が家では暖房器具をすっかり片づけた。すると、空は晴れているけれど風が冷たく強く、夕方になるとしんしんと冷気が下へ降りてきて、フローリングの床が冷たい冷たい……。

母の部屋の床暖房の、設定温度を再び上げた。
京都の家は、夏の暑気を和らげる構造になっているので、冬はとことん寒く、こうした季節の変わり目に、順序を裏切るかたちで冷え込みが来たりすると寒いことこの上ない。
寒いなあ、寒いなあと母が言う。
「せっかく冬のもん片づけたけど、また出して、着てんねん」
なかなか衣替えもうまくいかない(笑)。
しかしあと2、3週もすれば「夏」になる。
暑くなってから慌てて夏支度はたいへんなので、今から少しずつ家を夏仕様に替えていく。

知人のオフィスをあとにし、まちなかを自転車で走る。
真昼。平日のこんな時間に繁華街を走るのは何年ぶりだろうか。
あっちの角を曲がり、こっちの道を突き抜けて……と目的なく縦横に走る。
そこここに、満開の桜が見える。まったく、桜はそこいらじゅうにあり、今が盛りと開いている。

デイサービスセンターでは、昼食後のレクレーションの時間に外出させてくれることもある。先週、気温が上がった時に母たちのグループは岡崎公園のほうへ連れていってもらったらしい。入場料の要るところには入れないので、お金を使わなくてもよく、車を停められて、車椅子でも通行できて、となると、こんなにいたるところに桜が咲いてても、意外と見に行けるところは少ないのだと、スタッフが言っていたそうだ。
まったく、そうだな。美しいところは神社仏閣に集中している京都は、石畳や石段だらけで、まこと足下の不安定な人間には優しくないのだ。

「桜、きれいやったわあ。満開やったわあ」
その日帰宅した母はほんとうに幸せそうであった。
そろそろ、桜も散り始める頃である。


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